飲食店で月400時間労働していた時に失ったモノ

長時間労働の代名詞、飲食業。

最近の電通の事件で「長時間労働」に関するトピックがメディアで沢山取り上げられています。

そんな中でも飲食業の長時間労働も負けず劣らず目をみはるものがあります。

「いや~テレビで労働時間の事を騒いでるけど、俺の方がもっと働いてるな~」

こんな感想をお持ちの方もいるかもしれません。

かくいう私自身も、飲食店で働いていた時分には月に400時間労働という状態を達成し続けていました。

今回はその時に起きた事を書いてみたいと思います。

月400時間労働の内訳

友人や家族に、月に平均して400時間近く働いているといった事を話すとかなり驚かれます。

そりゃそうです。

厚生労働省によると、日本人の年間労働時間の平均は約2000時間前後が一般的。

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年2000時間てことは、月にならすと大体170時間ぐらいです。

1日8時間勤務で月に22日出勤すると、おおよそこの数字に近づきます。

飲食業からすると健全すぎて、ぐうのねも出ませんね。

一方、月400時間の飲食店勤務者はどうか?

これは私自身の実態です。

1日16時間拘束、月25日出勤(週一休み)

これでキッチリ月に400時間を達成します!

何をどうすれば月400時間もいくのか?

よく異業種の人に、一日16時間拘束されているといった事を話すと、

「そんなにやることあるの!?」

といった事を聞かれます。

実はこれには飲食独自の決められたパターンがあります。

飲食業、独自の文化

・24時間営業など営業時間が長い

・朝、市場に仕入れに行って仕込み、夜は店舗営業

・商品の配送やメニュー考案など店舗外業務も多い

・単純に人手が足らなすぎてやる事が多過ぎる

・会社からの拷問

こういった形で、単純に営業時間が長すぎるか、何か業務が複合するなどして異常な勤務時間が実現しているのですね。

残業の概念がない飲食店

よくテレビやネットなどで、

・残業時間が150時間は完全に過労死ライン!

・時間外労働が100時間なんてありえない!

といった類の事が叫ばれます。

これらの労働時間に関するニュースなどは当時からよく耳にしていましたが、今一ピンときませんでした。

というのも飲食店はまずもって8時間労働などという考えでやっている人が、そもそも少ない。

12時間、15時間拘束といったことがもはや当たり前になりすぎていて、

「あ~、今日は4時間残業したなあ。」

「今日は6時間も余計に働いたぞ」

こういった考えが根本的に希薄なのです。

そのため飲食で働いている人のほとんどが、「今日は定時で帰れればいいなあ」などといった考えをもっている人は皆無といってもいいぐらい。

12時間働こうが16時間拘束されようが、ごく当たり前の日常をこなしたというだけで、今日も残業を沢山したという感覚はないのです。

いわば、残業の概念がないとも言えます。

しかも周りの人間も全員が同じ感覚でやっているので、それが普通化している。

改めて振り返ると恐ろしすぎます。

長時間働く事がかっこいいと勘違い

今から振り返ってみると考えられない事ですが、当時は長時間労働することが自分の中で「かっこいい」とも考えていました。

長時間労働の勘違い

・理由は分からないが、何か頑張っている感がハンパない

・俺はやっているという謎の達成感

・長時間労働=忙しく充実している人という優越感

恥ずかしいかな、当時の自分は本当にこんな感覚に陥っており、欠勤者が出た時や多忙な12月などには更に率先してお店に入るといった事を繰り返していました。

「人出不足の中、積極的にお店にシフトインする俺。かっこいい!ヒャッハー!!」

こんな形で、歪んだ陶酔感にひたっていたのです。

またそんな自分を後押しするかのように、会社側からも長時間働く姿勢で仕事に望むことが賞賛されましたし、周りの社員達も似たような空気を持っている人がほとんどでした。

会社という狭い世界の中で自分のやっている事が評価されると、価値観が固定されてしまい、ますます他の事に目が行かなくなってしまうんですね。

そうなると当時は見識が少なかった事もあり、頑張っている自分がかっこいいと信じて疑いもしなかったのです。

長時間労働は創造力をなくす

飲食店は薄利多売な業種です。

一日で100万の売上を上げたとしても、そのほとんどは仕入れや人件費で持っていかれてしまう。

営業時間を狭めるようなものなら、途端に売上が落ち、経営を圧迫していきます。

そのため残業手当うんぬんも言わず、黙々と長時間労働してくれる社員は会社から高評価を得ます。

更に新人の時からこういった姿勢で臨んでいると出世も非常に早い。なまじ売上がいいお店だったりすると、グングン出世していき1年で店長、マネージャーなんていう話も夢ではない。

要は短期間でけっこうなポジションについてしまうのです。

そんな長時間労働の評価を背景にした社員が上に立つとどうなるのか?

自分が歩んできた軌道を部下にもかぶせてしまうのです。

歪んだ能力

・飲食店は休みなく長時間働いてなんぼだ!

・長い時間働いてない人は発言なんかするな!

・社員が長時間働いているからバイトもついてくるぞ!

・俺たちこのお店に住むぞ

こういった事を部下に教育という名のもと、押し付けていってしまうのです。

言ってみれば、何かあった時は「体力」と「時間」を切り売りするしか能がないという人を教育量産している状態になる。

月に400時間もの時間を切り打って上に立った人は、結局のところ何か問題が生じた時の打開策が長時間労働しかありません。

斬新なアイデアでカバーするといったことや、仕組みを構築するといった創意工夫ができないのです。

すると何が起きるのか?

有能な人ほど、すぐに辞めていくという現象が起きるのです。

異常に気づいたのは大量の退職者を目の当たりにして

当たり前の話しですが、長時間労働がいいという人はほとんどいません。

歪んだ価値観と評価の中で生きていた自分からは、想像もつきにくかった事ですが、自分が上に立ってみて大量の退職者を目の当たりにして気付かされましたね。

下が全く育たないのですね。

大学の新卒はおろか、他業種から転職してきた人なんかは一瞬で辞めていきます。

残っているのは別の飲食店経験者とか、性格に難があるような人ばかり。

入っては辞め入っては辞めを繰り返す事になり、有能な人材が全く台頭してこないのです。

そうなると面白い事に、今まで長時間労働を推奨していた会社が手をひるがえすように、

お前の教育のやり方が間違っているのではないか?もっと部下を大切に育てろ!

こんな事を言い出す始末に。

今まで時間を切り売りしてきた人間が、会社から咎められて急に何か斬新なアイデアを提案するなんて到底ムリな話し。

私自身、大量の退職者を目の当たりにして、飲食業でやっていく事を真剣に考え始めた瞬間でもありましたね。

月400時間は後悔でしかなかった

当初はかっこいいと思ってやっていた長時間労働。

結局のところ、長く働く事は大量の退職者を生む結果や会社からは無能扱いを受け、いいところは何もありません。

長時間労働は美徳といった考えは歪んだ価値観でしかないのです。

よく日本は世界の先進国の中で、労働生産性が低いといった事が声高に言われます。

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(資料:公益財団法人 日本生産性本部

長い時間働いているくせに、たいした利益を生み出していないのですね。

これは結局のところ、何かあれば「時間」と「体力」でカバーしてきて、仕組みやアイデアに働かせるといった発想が無かったためこういった結果になってしまっている。

自分自身、結果的に長時間労働は悪、といった事実に気づく事はできました。

時間を切り売りして出世しても、残念な上司に落ち着くだけですし、人材が育たなければ会社の利益も生み出すことはできない。

このブログを読んでいる人には、同じような道を歩んで欲しくありません。

もっと違う環境の中で育ってきたら、色々な改善策を提案できたかもしれないし、発想も柔軟になった可能性だってある。

今、若干ですが飲食業界全体が労働生産性を意識し始めている気風があります。

ロイヤルホストが24時間営業を撤退したりしているのも、長く働けば儲かるといった考えが間違っているという事を裏付けているのかもしれません。

このご時世にあって、今だに「働く時間の長さ」で評価をしている会社は要注意といえるのではないでしょうか?

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